ぼくがカンガルーに出会ったころ
2006年7月3日 読書 コメント (3)
ISBN:4336047766 単行本 浅倉 久志 国書刊行会 2006/07 ¥2,520
ヴォネガットやディックの翻訳家として有名な、浅倉久志さんのエッセイ集。翻訳についてのコラム、訳者後書き・解説、論考など、多彩な仕事と、翻訳書一覧は必携のアイテムです。まさに待望という言葉がふさわしい。
浅倉久志という人は、僕がSFを読み出してから始めに意識した翻訳者でした(その次が伊藤典夫さん。矢野徹さんや野田昌広大元帥は結構後になって意識しました)。
爾来、僕はこの人の仕事を追いかけてきたようにも思います。
何せ、本書を読みながら感じたことに、僕の書く文章が、彼のそれとひどく似通ったものに(当然巧拙は論じれるようなものではないのですが)なっていたことに気づかされたのです。句読点の打ち方や、ちょっと引用で済ませてしまうところとか、何だか人の文章を読んでいる気がしなかったのです。
一方で、浅倉翻訳は多くのものにとって読みにくいと聞かされることがあります。僕の周りも「翻訳調が鼻についてちょっと」と言うものも少なくありません。
まあ、そもそも翻訳というもの自体は読みにくいものなわけですが、それを差し引いても、独特な癖とでもいいましょうか、確かに妙にくどいのかもなぁと思うときはあります。このブログタイトルの元ネタ、『スキャナーに生きがいはない(Scanners Live in Vain)』は浅倉さんの訳ですが、少し訳しにくそうな雰囲気はあります。ゆえに、版が変わる毎とまではいいませんが、少しづつ変わっていっているようです。
つまり、いまだに(なのかどうかはよく知りませんが)、成長を続けているとみることも出来るわけで、そう考えれば、SFを通じて一人の翻訳者の成長をみていくことさえ出来るわけです(その在りようが、プロとしてどうなのかはさておき)。
唯一つ確かなことは、浅倉久志という人物がいなければ、数十の作品が私たちの言語に触れることはなかったということでしょう。
浅倉久志という名を知るものも、知らぬものも手にとってほしい一冊です。
ちなみに、何がカンガルーなのかというと、カンガルーを意匠にしたペーパーバックのマークがあるそうで、浅倉さんのSFとの出会いでそのことに言及されています。あと、もうひとつ、名前は、読んで字のごとくアーサー・C・クラークから。
ヴォネガットやディックの翻訳家として有名な、浅倉久志さんのエッセイ集。翻訳についてのコラム、訳者後書き・解説、論考など、多彩な仕事と、翻訳書一覧は必携のアイテムです。まさに待望という言葉がふさわしい。
浅倉久志という人は、僕がSFを読み出してから始めに意識した翻訳者でした(その次が伊藤典夫さん。矢野徹さんや野田昌広大元帥は結構後になって意識しました)。
爾来、僕はこの人の仕事を追いかけてきたようにも思います。
何せ、本書を読みながら感じたことに、僕の書く文章が、彼のそれとひどく似通ったものに(当然巧拙は論じれるようなものではないのですが)なっていたことに気づかされたのです。句読点の打ち方や、ちょっと引用で済ませてしまうところとか、何だか人の文章を読んでいる気がしなかったのです。
一方で、浅倉翻訳は多くのものにとって読みにくいと聞かされることがあります。僕の周りも「翻訳調が鼻についてちょっと」と言うものも少なくありません。
まあ、そもそも翻訳というもの自体は読みにくいものなわけですが、それを差し引いても、独特な癖とでもいいましょうか、確かに妙にくどいのかもなぁと思うときはあります。このブログタイトルの元ネタ、『スキャナーに生きがいはない(Scanners Live in Vain)』は浅倉さんの訳ですが、少し訳しにくそうな雰囲気はあります。ゆえに、版が変わる毎とまではいいませんが、少しづつ変わっていっているようです。
つまり、いまだに(なのかどうかはよく知りませんが)、成長を続けているとみることも出来るわけで、そう考えれば、SFを通じて一人の翻訳者の成長をみていくことさえ出来るわけです(その在りようが、プロとしてどうなのかはさておき)。
唯一つ確かなことは、浅倉久志という人物がいなければ、数十の作品が私たちの言語に触れることはなかったということでしょう。
浅倉久志という名を知るものも、知らぬものも手にとってほしい一冊です。
ちなみに、何がカンガルーなのかというと、カンガルーを意匠にしたペーパーバックのマークがあるそうで、浅倉さんのSFとの出会いでそのことに言及されています。あと、もうひとつ、名前は、読んで字のごとくアーサー・C・クラークから。
コメント
それでも、『あなたの人生の物語』の翻訳は実に素晴らしかったと感じた。
あの翻訳でなければ、作品の魅力は半減していただろうと思う。
君が始めに意識した翻訳者ってのも納得だ。
伊藤典夫は寡聞にして知らないけれど、矢野徹翻訳の『月は無慈悲な夜の女王』は題名も含めて名訳だと思った。
翻訳者が作品に与える魅力は、本当に大きいねえ。
短編「あなたの人生の物語」は公手成幸(スティ−ヴン・ハンタ−とかの、推理、ハードボイルド系)さんだ。
ちなみに、伊藤典夫さんは、ティプトリーとか、2001年などの翻訳で有名。
確かに翻訳調って感じはするねえ。
でも、読みやすかったよ。癖というより、味と言っていいんじゃないかと。
まあ、自分の意見じゃ参考にもならんか。